美味しい時間

会議室から出ていこうと歩き出した背中に、思わず声をかけてしまった。

「課長、明日のお見合い……」

そこまで言いかけて、口を噤み俯いた。
課長の足が止まる。

「いえ……。なんでもありません」

少しの静寂の後、それを破るように会議室のドアの閉まる音が聞こえ、課長が
この場からいなくなったことを告げた。
身体の力が一気に抜け、床にしゃがみ込む。

自分から課長を突き放しておいて、今さらお見合いのことを聞いてどうしよ
うというのか。自分のしたことに呆れ、笑ってしまう。

「未練タラタラだなぁ」

重い腰を持ち上げ立ち上がると、憂鬱な気分でフロアに戻った。




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