美味しい時間
「あそこ、最近ランチ始めたんだって。すっげー旨くってさ」
満面の笑みで言うところを見ると、よほど美味しかったんだろう。
店が近づくにつれて、香ばしい香りが漂ってきた。その香りに引き寄せられる
ように歩いて行く。
「会社の近くに、こんな素敵なお店があるなんて知らなかった」
「だろ!」と自慢げに眉を上げて話す寺澤。
こんな素敵なお店を見逃していたなんて……。料理も好きで食べるのも好きな
私としては、ちょっと悔しい。
でもここは素直に負けを認めて、店の扉を開けた寺澤の後に続いた。
「いらっしゃいませ」
カウンターの中から、笑顔の素敵な女性が顔を覗かせた。
「2人だけどいい?」
寺澤がそう聞くと、一番奥のテーブルに案内された。窓からは、手入れの行き
届いた小さな庭が見える。
店の中も、木の温もりが感じられる作りになっていた。
カウンターの中では、父親と同じくらいだと思われる男性が黙々と料理を作って
いる。