美味しい時間

朝と違って、ゆっくり歩いて家に帰る。

嫌だ嫌だと思っていたって、課長と買い物することは決まっていること。
だったら気持ちを入れ替えて、晩ご飯を何にするか考えよう。

中華料理、イタリアン、焼肉。
お寿司もいいなぁ~。回転しないのねっ!
そんな事を考えていると、ワクワクしてきて楽しみになってきたっ。

「課長なんて、どーんと来いってんだっ!!」

と叫び、拳を高々と上げながら角を曲がると、アパートの前に今朝見たような車が停まっていた。
嫌な予感がして恐る恐る近寄ると、運転席のドアが開く。

「あんだけの距離を、何分かけて帰ってくるんだよ」

呆れた口調でそう言いながら、課長が出てきた。

「うわぁっ……出たっ!」

「俺はお化けか」

びっくりした……。
何で課長のほうが早く着いてるんだろう。
腕時計を見てみると、6時を15分も過ぎていた。
あれ?そんなにのんびり歩いてたっけ?
う~ん……と考えていると、課長が不機嫌そうな顔をして私を見た。

「営業の寺澤だっけ? あいつと話してただろ」

「はい……って、見てたんですかぁ?」

「見てたんじゃなくて、見えたんだよ。って言うか、俺と約束してるんだから、さっさと帰ってこいよっ」

……私、何で怒られてるんだろう……
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