美味しい時間

課長がなにか言ってくれるかと思っていたけれど、怪訝な顔をしているだけで、
言葉を発する素振りを見せてはくれなかった。

私は何を期待しているんだろう……。

この期に及んで甘い期待をしている自分に腹が立つ。唇を結び、顔を背けると
追い打ちをかけるように倉橋さんが話しだした。

「今からお見合いなの。邪魔しないでね」

美和先輩が、(アホらしい)とでも言い出しそうな顔をして私の腕を掴む。

「お見合いに一緒に来るなんて……。ほんと、おめでたいですね。では、さよ
 うなら」

嫌味たっぷりにそう言うと、唖然としている私を連れてその場を離れた。
されるがままに引っ張られホテルから出る。しばらく何も話さないまま歩き続け
ていると、美和先輩が急に立ち止まった。



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