美味しい時間
「早く起きないと、もっと強く抓っちゃいますよぉ~」
「……じゃあさぁ、昨日の寝るときみたいに、百花がキスして」
「しょうがないなぁ。キスしたら、ちゃんと起き……て……」
あれ? 課長、起きてるの? それに今の課長の言葉、何かが引っかかる。
“昨日の寝る時みたいに、百花がキスして”?
確かに昨晩は、寝ている課長におやすみのキスをしたけど……。
何で寝てたはずの課長が、私がキスしたことを知ってるの?
身体を少しずらし課長の顔を見てみると、瞑っていたはずの目は、ニヤリと
弧を描いて笑っている。
はぁ……またやられた。
寝息を立てていたから、てっきり寝てるもんだとばかり思っていたけど、起きて
たのね。
ジロッと睨み返すと、大して悪びれもせず顔を近づけてきた。
「百花、おはよう」
チュッと、おでこにキスをする課長。
ほんの少し触れるだけのキスなのに、なんか嬉しい……。
さっき睨み返していた顔は、フニャッと笑顔になってしまう。
「お、おはよう」
「はいっ、キスして」
「……!?」
鼻と鼻がぶつかった。
「ずるい……」
「そんな俺が好きなんでしょ?」
もう何度も言っていることだけど、こうなった課長には何をしても、言っても
無駄。苦笑しながら、課長の唇にキスをする。すると、一瞬で課長が私に覆い
かぶさってきた。
「ほんとに……。そんな素直に可愛いことすると、朝から襲うぞ」
「じゃあ、朝ごはん、要らない?」
「そうきたかっ」
そう言うとベッドから起き上がり、豪快に笑いながら部屋を出ていく。
その姿を見送ると自分も起き、大きく背伸びをした。
「さてと、朝ごはん作ろっ」
ベッドから飛び降りると、笑顔で課長の後を追った。