美味しい時間

「泣いたり謝ったり怒ったり、大変だな」

「誰の……せいだと、思って……るのっ!!」

何も笑うことはないじゃないっ。
ちょっと反抗してやろうと振り向いたら……。

チュッと音を立てて、唇を奪われた。

軽く吸われるだけのキスだったのに、それだけで心が満たされる。寂しくて泣い
たことも、そんな自分が不甲斐なくて謝ったことも、その原因を作った課長に怒
ったことも、全部どうでもよくなってしまった。

「百花が笑ったり怒ったり泣いたりするのは、全部俺の責任だな」

「な、何それ?」

「俺の行動一つで、百花は一喜一憂するってこと。それだけ俺のことが好きなん
 だろ?」

「自惚れ過ぎ」

「違う?」

「ち、違わないけど……」

すっごく好きだけど、何か悔しい。
口を尖らせている私を見てニヤッと笑ったかと思うと、息が苦しくなるほど抱き
しめられた。

「だからお前の全部に責任を持つ。しばらく離れて寂しい思いをさせるけれど、
 必ずその思いを俺の気持ちで埋めてみせるから。愛してる……」

愛してると、耳に息がかかるほど近くで囁かれ、身体が震えた。スイッチが入っ
てしまう。顔を押さえ込まれ、見つめ合う。

「百花の顔、エロいんだけど」

エ、エ、エロいだとっ!
もしそうだとしたら、それは課長がさせたんだっ!!

「やっぱり俺の一言で、可愛くなったりエロくなったりするだろ」

「なってないっ!!」

「強情だなぁ」

ニヤリと笑い顔を近づけると、深いキスをしてきた。
< 307 / 314 >

この作品をシェア

pagetop