珈琲に誘われて
珈琲と黒
「ありがとうございました」
常連のハンチング帽を被ったおじさんは笑顔で手振って帰っていった。
空っぽになったカップを下げシンクに置いた。
ここは喫茶店magnolia
祖母が大切に切り盛りしてきたお店。
いつも仕事で忙しかった両親に代わり祖母に育てられ、ここは大切な家でもある。
大好きだった祖母が昨年亡くなりこの店を継ぐことになった。
カランカランと来店の音が店に響いた。
洗ったカップをトレーに置いて顔を上げた。
「いらっしゃいませ・・・あっ」
入り口には先日助けてくれた黒ずくめの男が立っていた。
「この前の・・」
「先日はありがとうございました!!どうぞおかけになってください!」
彼はカウンターに座るとサングラスを取った。
思っていたよりもやさしい瞳にドキッとした。