悪魔の熱情リブレット
「主よ、どちらですか?殺害による破壊か、愛情による破壊か」
シルヴェスターの問いにアンドラスは面白そうに答えた。
「愛情による破壊か…。考えたこともなかったよ」
そう言いながら再び仮面を被るアンドラス。
「ちょっと外を見てくるよ。ティアナをよろしくね」
シルヴェスターが了承し、アンドラスが窓から出て行こうとした時だった。
「マ、ママは…?」
少女のか細い声にアンドラスは足を止めた。
「君のママは死んだよ」
白い悪魔は、六歳の少女には残酷過ぎる言葉を言った。
「う、そ…ママが…?」
「真実さ。君のママは悪魔である僕を呼び、この町の住人を殺すよう願った。ティアナ、君を守るためにね」
アンドラスの顔は仮面でわからないが、その声でどんな表情をしているのか想像できる。
彼は絶対に笑っている。
「君のママは君を守った。自分の命を代償にね。だから君は生きてる」
「そんな…」
ティアナは涙目になった。
「それじぁ、それじぁ…」
――ママを殺したのは、ワタシ…?
「みんな死んじゃったのは…」
――ワタシノセイ…?
ショックが大きすぎたのか、ティアナはその場で気絶してしまった。
そんな彼女をシルヴェスターが抱き留める。
血だらけの両手で。