悪魔の熱情リブレット

「じゃあ、気をつけてな」

別れを告げて馬車が行ってしまうと、アウレリアはじっくり町を眺めた。

「小さい頃、おばあちゃんから聞いた…あの『呪いの町』だよね?」

ごくりと唾をのむ。

緊張と迷い。

悪戯かもしれない。

「おいで」と言っておいて本当は誰も待ってないのではないか。

頭が行くなと言っている。

けれど、その反対に心はひどく落ち着いていた。

(私、この景色を知ってるような気がするの…何で…?)

森の入り口で考える。

だが、すぐに考える機能がお手上げサインを出した。

「う~、悩んでたってわかんないよ!よし!行ってみよう!」

ここまで来て引き返すなんて馬鹿げている。

アウレリアは早足で町の中へと進んで行った。







 廃墟と言われている町だから、建物は崩れたものが多いのだろう。

そう思っていたのに意外と建築物が綺麗に残っていて驚いた。

「でも、やっぱり誰もいないみたい…」

アウレリアは地図を出して広げた。

「えっと…ここに時計塔があって、向こうに山上の教会が…」


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