悪魔の熱情リブレット

「君は昔、『ティアナ』だったのさ。それを今から思い出してもらうよ」

妖しく笑う瞳の見えない相手に、アウレリアは確かめたかったことを尋ねた。

「あなたは…あの夜の人、ですよね…?」

「そうだよ。あの晩は楽しかったね。それに、すごく気持ち良かった」

囁くようなその言葉に彼女は真っ赤になった。

「おいおいおいおい!!アンドラ~ス!?いちゃつくなら俺様帰るぞ~?」

バシンが尻尾を振り回しながら主張する。

「わかったよ…。本題に移るからさ。まだ帰んないでよ」

白い青年アンドラスはアウレリアの頬を一撫ですると質問を始めた。

「君は、こいつらを見て…何か感じない?」

「こいつら」とは目の前に並ぶ彼らのこと。

アウレリアは質問の意味がよくわからず首を傾げた。

「アンドラス、聞き方が悪いぞ。…アウレリア、我が輩は悪魔オセー。貴殿の前世の知り合いだ。我が輩を見て、生まれ変わる前のことを何か思い出さないか?」

直球かつ簡潔なオセーの問い掛け。

しかし、アウレリアは豹が喋ったことに驚いて、ろくに内容を聞いてはいなかった。


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