悪魔の熱情リブレット
「腹話術…?」
アウレリアが本気で悩んで出した答えにアンドラスは吹き出した。
「オセー、君を見ても何も心に響かないってさ」
「ぐぬぬ…」
苦い表情で唇を噛み締めるオセーを横目に、サリエルが言った。
「シルヴェスターはどうです?彼を見ても感情に変化はありませんか?」
箒を動かす手を止め、アウレリアを見つめるシルヴェスター。
赤い瞳が印象的だが何かを思い出す感じはしない。
「わかりません…。そもそも、あなた達は何なのですか?私は、なぜここに呼ばれたの!?」
アンドラスは戸惑いと不安で少し興奮した彼女を優しく包み込んだ。
「大丈夫だよティアナ。僕がいるからね。一緒に町の中を回ろうか。こいつらの顔を見てるより、その方が何か思い出すかもしれないしね」
失礼なことを言いながら、アウレリアを軽々と抱き上げ表へと飛び出す。
「うきゃあ~!」
「その叫び声、小さい頃のティアナそのまんま」
面白そうに笑うアンドラスに彼女はドキリとした。
(笑った時の雰囲気、かっこいいな…)