悪魔の熱情リブレット

「え…?あの『天使様』…?」

白い翼に白い衣を身に纏った天使。

いつも遠くから見つめられていた感覚。

視線を向けるとすぐに飛び去ってしまった真っ白の存在。

「うそ…!?あなたが!?でも羽がない…」

「羽は失った。その代わりに、君を手に入れたのさ」

抱きしめる力を一層強める。

「信じられない…!!だって、だって…天使様が!?」


――あなた…?


自分を襲った相手。

「天使様は…あんなこと…しない」

涙声になりアウレリアは俯いた。

「鈍いねティアナ。『あんなこと』したから羽を失ったんじゃないか。僕は君を手に入れるためなら、何度だって悪魔になってやるさ」

アンドラスは彼女の顎を掬い上げた。

「ティアナ…」

いつかこの場所で交わした口づけ。

「愛してる」と言ってくれた少女。

また彼女からあの言葉が聞きたくて、迫る。


――愛してるの


その一言が欲しい。

しかし、返ってきた現実は拒絶の悲鳴だった。



「やめてー!!!!」



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