神様がくれた夏




先輩との距離に、ゴクリと唾を飲み込んでは呟くように言う。



「な、んでもないです…」



こんなことを思ってはいけないのかもしれない。


あたしと先輩は彼氏と彼女という関係なのだ。



けれど思ってしまう。


どうしても思ってしまうのだ。




早く教室に戻ってくれないか、と。



早く帰って欲しい。


早くあたしの前から去って欲しい。



どうしようもなく願うのだ。


祈るのだ。



「そうか? 元気ないんじゃ?」



「そんなこと、ないですよ?」



お願い、頑張って。


あたしを保って。


< 67 / 468 >

この作品をシェア

pagetop