窓際のブラウニー
バス停のベンチは座るとギシギシと音を立てた。
淡いブルーの背もたれは、錆びていて、背をつけることを躊躇させた。
「遅いわね」
どうやら、家を出たあたりから機嫌が悪いらしい。
時間通りにやってきたバスに、乗り込む私達。
水曜の担当のヘルパーさんは、とても親切なおじさんだった。
定年を少し早めて、この仕事に就いたと話してくれたことがあった。
・・・え?
いつも迎えてくれるはずのおじさんの姿がない。
お年寄りばかりの暗い雰囲気のバスの中に
異彩を放つ一人の男性。
ここにいてはいけないのではないかと思うほどの
存在感と爽やかさ。
「どうぞ・・・」
差し出された手をお義母さんは掴もうとはせず、バスの手すりを掴む。
一瞬寂しそうな顔をしたその男性は、私に向かって会釈した。
その落ち着いた微笑みは、まるで
『苦労してるんですね』と私に囁くようで・・・
誰かに認めてもらえたという満足感で私の心は満たされた。
誰・・・?
初めて見るその人は…
バスの中の空気を変える。