一度の保証(短編集)
「も…もか ももか 桃華 桃華… 良かった。良かった桃華」


「ママ?」


そこへ医者が来た。


「楠木さん、いいですか?」


「はい。先生。
どうぞ」


先生に言うと、パパは、ママの肩を持ち支えながら移動させる。


医者は、あたしの横に来て顔を見て話す。


「楠木桃華さん。気分は、どうかな?」


「あの…?あたしは、生き返ったんですよね?」


「君は、死んでいないから生き返ってもいないんだよ」


「嘘よ!だってあたし無傷だし、どこも痛くないわ」

「君が目を覚ますまでに治したんだよ。いつ目覚めるか分からなかったけど、目覚めて良かった」


あたしは、医者の話をただ聞いてもう何もききかえさなかった。



あたしは、明日退院できる事となり、しばらく家族と同居が命じられた。


家に帰り 久しぶりに過ごすママとは不安があったが、ママは人が変わったように優しかった。


それを直に感じたのは、あたしが、醤油を床にこぼしてしまった時だった。


怒られると条件反射に目をつぶり頭を両手で抱え込み降って来るであろう衝撃を待った。


が、衝撃の変わりに目に映ったのは、ママが床のこぼれた醤油を雑巾で拭く姿
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