恋率方程式




アルトなら全てを任せられる。
そう思った。

「…話したい。」
「ん?」

初めて話したい。と思った。
思い出したくもない記憶を。
感情を捨てた時の記憶。

「それでお前の心の闇が晴れるなら。」
「…そうか」

また笑顔を向けられる。

アルトというこの好青年に自分の心はだいぶ飲み込まれたらしい。それが可笑しくてまた小さく笑った。アルトなら、そういう思いが沸いて来る。

イチの目には昨日見たテレビの偽善者は。心の救いとなったのだ。偽善者なんかではない。きっとこの笑顔は誰にでも向けるのだろう。好かれているはずだ。変な男と言われるのも当然だ。

そう思い小さく笑う。
そしてゆっくりと語り始めた。


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