恋率方程式
理論に基づく方程式を




あれから数時間。
私は元雇い主の家の前にいる。

「…………」

バイクをそこらに置いておき、ナイフを構えて音を立てずに中への侵入を試みる。
しかし−−

『…入りたまえ。』

そう無機質な音がしたかと思うと、いきなり高さ3mはある鉄の門が不気味な音を立てて開いた。

まさか。
感づかれた…?

ヒヤリと気味の悪い汗が肌を濡らす。
今まで殺しをやってきたからわかる。
まずい。

『…何をしている。早く入れ。』

また声が響く。
短く刈った髪が風に揺られる。
自分の中に迷いが生まれる。
当初の予定では、暗殺だった。
だが、気づかれている以上あちらも何かしら対策を練っているはず。まして、裏では有名な殺しの会社だった。
私は−−


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