恋率方程式
落ち着きを取り戻したイチ。その前には木製の大きな両扉。
スゥ…
一つだけ深呼吸をし、ナイフに手をかける。
相手はかなりの場を経験した身。こういう時の対策も練っているだろう。だが、イチだってそれには劣らない。
コンコン…
ギィ………
意を決してノックしたあと、返事を待たずにドアを開ける。すると中から花の香がした。
「依頼した事について何かあったのなら話せ。」
「………」
依頼主はバルコニーにいた。
広い部屋には無数の植物。花の香はこういうことだった。やや小さめの温室のようになっている部屋には十人ほどの男と、これまた花が咲き乱れるバルコニーには依頼主。男達はスーツにサングラスという格好。いかにもできそうなやつらだ。
しかし、その男達が目に入らぬかのようにイチは言葉を放つ。
「アルトは殺させない。」
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