恋率方程式




落ち着きを取り戻したイチ。その前には木製の大きな両扉。

スゥ…

一つだけ深呼吸をし、ナイフに手をかける。
相手はかなりの場を経験した身。こういう時の対策も練っているだろう。だが、イチだってそれには劣らない。

コンコン…
ギィ………

意を決してノックしたあと、返事を待たずにドアを開ける。すると中から花の香がした。

「依頼した事について何かあったのなら話せ。」
「………」

依頼主はバルコニーにいた。
広い部屋には無数の植物。花の香はこういうことだった。やや小さめの温室のようになっている部屋には十人ほどの男と、これまた花が咲き乱れるバルコニーには依頼主。男達はスーツにサングラスという格好。いかにもできそうなやつらだ。

しかし、その男達が目に入らぬかのようにイチは言葉を放つ。

「アルトは殺させない。」


_
< 44 / 59 >

この作品をシェア

pagetop