。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
ネズミが喰われるか―――それより早く動き出すか……か
「そんなことよりあたしには響輔のことの方が気になるわ。あいつ何しに来たの?」
この数日間で何回か電話があった。
電話が掛かってくるたびに、あたしはあの夜を思い出す。
ひとけのない神社で
キスをしたことを。
まるで恋を知ったばかりの小娘みたいに心をドキドキさせて、浮かれてたのはあたし一人だけ。
いえ、キスをしたのはあたしの方から。
響輔は―――戸惑っていた。
最初からあいつの心にあたしの入り込む隙なんてなかったのだ。
それを思い知らされた。
「今更何の用なのよ」
不機嫌そうに呟くと、
「さぁ。でも男なんて単純な生き物だから?理由なんて案外簡単かもよ。私からしたら君たち女性の気持ちの方が謎だ。
複雑な乙女心ってのかな?」
玄蛇は不思議そうに言って、近くにあったあたしのバッグを引き寄せると、バッグハンドルにぶらさがっているテディを握った。
「響輔からもらったものだろ?電話を無視するくせに、このクマはいつも君と一緒だよね」
あたしは玄蛇からバッグごとひったくると、玄蛇を睨み下ろした。
あたしだってわかんないわよ。
本当はすぐにでも捨てたかったけれど、それだけは何故かできなかった。
だってこれは、
響輔がはじめてあたしにくれたものだから。