。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
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TRRRR…
少しだけうとうとしていたあたしは、無機質な部屋の電話の呼び出し音で起こされた。
うっすらと目を開けると響輔がすぐ隣で、
「電話やよ?」と指で枕元を指し示す。
響輔―――……良かった。寝ている間にどこか行っちゃうかと思ったから。
だから逃がさないようにこいつに巻きついていたわけだけど。
その手を離してあたしはのろのろと受話器を取り上げると、
『フロント係でございます。鴇田様に外線電話が入っております。お繋げいたしますか?』
と女性フロント係の声を聞いて、一瞬“鴇田”と呼ばれたことに違和感。
そうだった…あたし、今鴇田の名前でこのホテルに宿泊してるんだった。とぼんやりした頭で思い出す。
「外線?」
誰だろ……
枕元のデジタル時計を見ると、夜中の2時30分を指し示していた。
すぐ隣で響輔はごそごそと身動きして布団を肩まで上げて、目を閉じている。
「男?男やろ、こんな時間に。間違いないで。俺、少し眠るからごゆっくりどーぞ」
「違うわよ!」
あたしは布団の上から響輔を叩くと、
「痛っ」と言ってくぐもった声を上げた。
でも一体誰だろう―――外線なんて……
「繋げて」
あたしがフロント係に短く答えると、
『では、お繋ぎいたします。少々お待ちくださいませ』
と言って、またもコール音に変った。2、3回のコール音がなり、
『こんばんはぁ。夜分遅くにすみませぇん
虎間 戒です~♪』
明るい男の声に、あたしは受話器を持ったまま目を開いた。
ちらりと目を閉じている響輔に視線を落とす。
男には違いないけど―――
『響輔をどないしたん?あいつは無事か?』
急に声のトーンを2トーンも低めた虎間 戒の声を聞いて、あたしは目をまばたいた。