。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



玄蛇との通話を終えて、あたしはすぐにその履歴を消去した。


飲みかけのオレンジジュースに口を付ける。すっかりぬるくなっていて、ちっともおいしくなかった。


あたしはシンクにオレンジジュースを捨てると、


ザー……


バスルームから変わらず湯が流れる音に耳を澄ます。


そっと耳を澄ませると、その水の音はリズムが安定していて、シャワーを浴びているという気配がなかった。


まさか湯を出しっぱなしにして、どこかへ消えた?


慌ててバスルームを覗くと、こちらに背を向けていた響輔が振り返って、ぎょっとしたように目を剥く。


響輔はジーンズを履いたままバスタブに片膝をついていて、湯を張っていた。


「何や、強姦未遂の次は覗き?」


呆れたように言われて、あたしは慌てた。


ってか強姦未遂って!まぁそうかもしれないケド…


「ち、違っ!!あ、あんたがどこかへ行っちゃったかと思って」


「風呂溜める言うたやん。あんたこそ何聞いとったん?」


意地悪そうに目を細めて、湯がたまったのか蛇口の湯を止めた。


「ょし」とマイペースに短く答えて、ベルトに手を掛ける。


「「…………」」


「ちょぉ。あんたは出てって」


ぐいと背中を押されて、バタン。響輔はバスルームの扉を強引に閉めた。


「ちょっとぉ!あたしを追い出すとはいい神経ね!」


ドンドンと扉を叩いて抗議したけど、


カチャッ


ドアが内側からちょっと開いて、響輔が顔だけをちょっと出した。


「見せ付けるほど自信があるわけやないんでね」


ズイっとジーンズを押し付けると、


「これ、そこ置いといて。覗き厳禁。ついでに言うと服隠すのもな」


と言ってまたもバスルームの向こう側に消えて、今度こそ


カチリ


と鍵を内側から掛けた。





な、何よ!!あたしは覗きなんてせこいことしないわよ!


溺れろ、バーカ!



そしたらあたしが、





人工呼吸で助けてやってもいいわよ?






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