君へ、約束の歌を。<実話元>
「うん……ありがと!」
祐ちゃんが体を起こしながらそう言って、タオルを外す。
『…!?』
…私は、見てしまった。
祐ちゃんの目尻に、涙が残っているのを。
落ち込んでいる祐ちゃんを見たのは、
初めてだった。
祐ちゃんはさりげなく目を拭うと、何事もなかったかのように明るい声で言った。
…祐ちゃんのいつもの声で。
「オレ、ちょっと砲丸投げの友達んとこ行ってくる!」
元気よく階段を駆け降りていって、
見えなくなった祐ちゃん。
私は、疲れてたってこともあるけど、
なんとなく、祐ちゃんがしていたように寝転がってみた。
顔にタオルはかけず、右腕で目を覆う。
…涙を見られたくなくて、タオルで隠すのが不自然じゃないように寝転がってたのかな?
泣いてるのを見られたくないっていうのは祐ちゃんらしいけど。
思うように自分の力が出せなくて悔しいっていう思いの涙には、正直びっくりした。