桜花舞うとき、きみを想う


航空部隊に編入して、数日が経った、ある日のことだった。

「中園さんですよね」

空き時間に体力づくりのための腕立て伏せをしていたぼくの頭上から、声が降ってきた。

「え、はい」

息を切らしながら顔を上げると、そこに立っていた懐かしい顔に、思わず頬が緩んだ。

「永山さん!」

「お久しぶりです。まさかこんなところでお会いするとは」



永山さんは、故郷の役場に勤めていた同年代の青年だ。

兄の戦死公報と、ぼくの召集令状を届けた人でもある。

通知を受け取った日は、複雑な思いに駆られ、永山さんに対しずいぶん失礼な物言いをしてしまった。

本来なら顔を合わせること自体気まずいはずだったが、短期間にいろんなことがありすぎて、知っている顔に出会ったというだけで、ぼくは無性に嬉しくなった。

そして、ぼくと同じように嬉しそうな笑顔で話しかけてくれた永山さんを見て、さらに嬉しくなった。



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