桜花舞うとき、きみを想う
梅雨に入り、夏がいよいよすぐそこまで迫って来た頃、起床して食堂へ向かう廊下の掲示板に人だかりができていた。
近頃、たびたびこういう朝がある。
掲示されている内容は、決まっていた。
「中園くん、おはよう」
「おはよう、永山さん」
永山さんの表情がやけに暗い。
そのときぼくは嫌な予感に襲われ、そしてそういうときの予感は大抵、当たるものなのだった。
「とうとうお別れだ」
永山さんは、ぼくにしか聞こえない小さな声で囁いた。
「お別れって……」
ぼくは人ごみの後ろから背伸びをして、掲示板を見た。
そこにはたしかに、永山さんの名前があった。