桜花舞うとき、きみを想う
「ぼくは、中園くんもぼくと同じ特攻要員だと思っていたけど、違うようだね。もしそうなら家族に会うための休暇がもらえるはずだし、そもそもきみ、飛行訓練をしていないものな」
「……やっぱりそう思うかい」
「思うさ。ずっと基礎訓練ばっかりしてりゃ、誰でも気付くことだ。大怪我をしていたっていうし、そのうち内地勤務になるんじゃないかって噂もあるよ」
もし本当にそんなことになれば、どんなにいいだろう。
けれど清水さんと交わした会話が、ぼくを完全に安心させてはくれなかった。
命を投げ出しても構わないと言ってしまったのだ。
当然ぼくも、特攻兵の候補の一員となっているだろう。
「ま、とにかくさ」
永山さんがまた夜空を見上げた。
「いよいよかと思うと、むしろ清々しい気分だ。もしきみが復員したら、家族に伝えて欲しい。潔い最期だったと」
ぼくと永山さんは、最後に固い握手をして別れた。
翌朝、大勢の地元の人や基地の人間に見送られ、永山さんたちは飛び立ち、そしてそのまま、還って来なかった。