桜花舞うとき、きみを想う
やがて体が少し温まってひと息ついたとき、母が居間に入って来た。
「礼二、玄関の戸、おかしくなかった?」
「とくに気にならなかったけど、どうかしたの」
「今朝からどうも何か引っかかる気がするのよ」
母は頬に手を当て、首をかしげた。
ここで、ちょっと見てみましょうと言えたらよかったのだが、ぼくは外の寒さを思い出し、冷えた玄関へ行くことをためらった。
けれど隣で一緒に茶をすすっていたきみが、
「礼二さん、見てみたら」
とおせっかいなことを言ったから、結局ぼくは重い腰をあげることになった。
氷のように冷たい戸を何度か開け閉めすると、なるほど、どこかに突っかかる感覚があった。
女性の力なら、なおさらかもしれない。
ぼくは戸をはずして、玄関の外に横倒しに置いた。