桜花舞うとき、きみを想う


やがて体が少し温まってひと息ついたとき、母が居間に入って来た。

「礼二、玄関の戸、おかしくなかった?」

「とくに気にならなかったけど、どうかしたの」

「今朝からどうも何か引っかかる気がするのよ」

母は頬に手を当て、首をかしげた。

ここで、ちょっと見てみましょうと言えたらよかったのだが、ぼくは外の寒さを思い出し、冷えた玄関へ行くことをためらった。

けれど隣で一緒に茶をすすっていたきみが、

「礼二さん、見てみたら」

とおせっかいなことを言ったから、結局ぼくは重い腰をあげることになった。



氷のように冷たい戸を何度か開け閉めすると、なるほど、どこかに突っかかる感覚があった。

女性の力なら、なおさらかもしれない。

ぼくは戸をはずして、玄関の外に横倒しに置いた。



< 96 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop