アゲハ~約束~
「なんどかルフナはうちに来たことがあるんだよ。あいつはこの町が好きでね。このあたりに来ると毎回このうちに泊まってたんだ。」

「・・・そう、だったんですか・・・?」

「ああ。・・・なんでも、恋人を置いてきた町に似てるんだと。」



 そこまで言ったところで―――・・・

 ふっと、彼は何かに気付いたように両眉を引き上げる。

 そしてゆっくりと手をアゲハのほうにやって、尋ねた。



「もしかして・・・あんたが、アゲハ、さんか?」

「・・・はい。」

「ああ!・・・そうだったのか。・・・いやぁ、はは、あんたがねぇ・・・」

「あの・・・何か言ってましたか?」

「言ってた言ってた!何度もノロケられたよ。」



 悟はその、ノロケのないようについては詳しく語らなかった。

 けれど、なんだか恥ずかしくなってアゲハは顔を手で覆う。



「もう・・・しょうもないことばっかり。」



 そういいながら、アゲハは、それでも笑っていた。


 ―――笑っていた。


 だから――――――・・・

 気付かなかったんだ。

 幸人も、夏梅も。





 彼女が心に決めた、あることに。



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