アゲハ~約束~

4.

 悟とは、これから連絡を取り合おうと住所を交換して別れた。

 そして三人は、近くの町のホテルに一泊してから、日本へ帰国の途に着いた。



 ホテルでは、やけにアゲハがよくしゃべった。

 今までの思い出話―――出会ってから、今まで―――に花が咲き、こんな楽しそうな彼女を見るのはもしかしたら初めてだったかもしれない。

 あのまま直で日本に帰る道もあったが、無理をせずホテルに一泊したことを、幸人は懸命な判断だったと思った。

 おかげで、彼女のこんなに楽しそうな笑顔が見れたのだから。


 ―――長かった旅。


 それが終わろうとしている。






 「それ」はアゲハにとって、特別な意味を持っていた。






 世界中を飛び回った身では、アメリカから日本へなどちょっとした時間に過ぎず、彼らは休むこともなく空港からバスで、学園へ向かった。


 バスを降りたとき、ちょうど時計は四時半を指していた。


 空が、茜に染まる時間である。



「・・・」



 バスから降りたアゲハは、そのまま立ち止まって、じっと海を見つめる。

 そして、先に歩き出そうとしていた二人に後から声をかけた。


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