アゲハ~約束~
「・・・私、本当に幸せだった。」



 あなたと出会えて。

 いろんなことを知ることが出来た。

 自分だって素直になれるって、知れた。

 君は素直だといってくれたあなたの横顔を、今でも覚えている。



 ―――ありがとうと、面と向かっていえればよかったのに。




「・・・ルフナ・・・」



 愛してる。

 その言葉を呟くと、自然と涙があふれた。

 口元に浮かべた笑みが、ゆがむ。

 ――――彼女は靴を脱いで、一歩、海へと踏み出した。



「・・・」



 何かを思い出したようにくすっと笑いながら、彼女は、海へ向かう足を止めようとしない。



「―――うそつき。」



 彼女は、ポツリと呟いた。


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