アゲハ~約束~

5.

 アゲハは、海岸にいた。



「・・・」



 ふと、手に持った携帯―――「ルー携帯」―――に、電源を入れた。


 ―――何ヶ月ぶりかに起動した携帯の待ち受け画面には、幸せだったころの二人。


 むくれたような顔のアゲハ。

 ―――二人で写真を撮るのが恥ずかしくて、そんな顔だった。



 ―――もっと、心から笑えばよかったのに。




「・・・ごめんね、ルー。」



 あの時、笑えなくて。

 画面をなでて、荷物を、砂浜の上に置く。

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