アゲハ~約束~
「・・・」



 ――――こんなとき。

 そんなことをしなくても彼は傍にいるとか。

 千だか万だかの風になって見守ってるとか。



 そんなことを言える人間のほうが、彼女にとっては優しいのだろうか。



 彼女の、傷ついたような瞳を見ながら、幸人は、心の中で苦虫を噛み潰す。

 けれど、自分にはそんなことはいえないから。

 せめて、自分が知っている真実を彼女に告げて、納得してほしかった。



「消したろうそくの炎はどこへ行く?どこにもないだろう?命だって同じだ、同じなんだよ。消えてしまったら、もうそれで終わりなんだよ。」

「・・・」

「・・・追いかけたって・・・悲しむ人が増えるだけだよ。」


< 126 / 146 >

この作品をシェア

pagetop