アゲハ~約束~
 彼女がそう聞くのも当たり前である。

 弱っているアゲハ。

 二人きりの部屋。



 何かあってからでは遅い。



 けれどルフナにそんなやましい気持ちはかけらもなく、彼は、ただまっすぐに向き合って、言った。



「寝込んでいるときに、一人でいるのは寂しいから。」



 目が覚めたときに一人なのは、とても、心細いから。



「そばについていてあげたいんです。」

「――――・・・」



 彼がまっすぐな瞳でそういったのをみて、園長は、そうですか、と安心したように笑って。 


 それなら、と、ルフナがそこにとどまることを許した。



「ただし、熱がうつっても自己責任ですよ。」

「は、はい!」

「それじゃぁ、私たちは出ていましょうか。騒がしくしていたらやすまらないからね。」



 彼女は、幸人と夏梅をいざなって廊下に出る。


 ドアが閉まる瞬間。


 幸人は部屋のほうを振り返り、眠っているアゲハと、それを心配そうに見つめるルフナの姿をその目に映した。



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