アゲハ~約束~
 こんなこともあった。



 学校でのこと。



 女子高生の話題は決まっている。

 芸能人、洋服、化粧品に、彼氏。



「ねぇ聞いてよ!」



 みんなで昼ごはんを囲んでいるときに、急に友人の明美が声を上げた。



「もう二週間彼氏に会ってないの!レポートの提出があるって言ってあってくれないの!!」

「えー、二週間ってきっつーい!」

「あ、そっか。あけちん彼氏、大学生だっけ。」

「・・・」



 大学生の彼氏がいる明美は、彼氏と二週間会えないとわめいた後、いかに好きな人と長い間会えないことがつらいかについて、皆から同情をもらってまわった。



「わかるわかる。」

「一週間でもうつらいもんね。」



 女子高だから、毎日恋人に会っている人間は少ない。

 誰しもが、二週間はつらいよと声をそろえた。


 そんな中で。



「・・・つらいね。」



 アゲハも、当たり障りなくそれに同調した。



 ――その時点で、二ヶ月と半分、アゲハはルフナにあっていなかった。



 ―――寂しいという気持ちは確かにある。

 けれどそれは、むしろ寂しいというより憎らしい。



 連絡すらない。



 約束を守る気などなく、きっと今頃は忘れているのだろう。



「三週間駄目なら別れるって言っちゃえば?」

「だよねーっ?!」



 あえない。


 彼の顔が見れない。


 ―――寂しくなんてないと、自分に、言い聞かせた。


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