《完》BLOODMOON~あやかしの花嫁~
滝行で、躰の芯まで冷え切り震えて、唇の色も青紫色。

水の冷たさが伺い知れる。


「俺に甘える程、か弱い女だとは思ってなかったが…」


「・・・」


「お前は気の強い女だからな。そう言うと思った」


「私も安倍家の当主だし…」


「来いよ…」


せっかく、滝行を終えて、滝水から上がったのに、再び、入水。


「川底は滑る、滝のそばまで、連れて行ってやるよ」


「ありがとう」


私に差し出す知弥の手は水と同じくらい冷たかった。
でも、彼の優しさは温かい。


二人で、滝へと歩み寄っていく。



震えるほどの水の冷たさ。


「戻るなら今だぞ」


「戻らない」


「気の強い女、だな」


知弥の口調は皮肉げだったけど、私は流す。
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