ひとまわり、それ以上の恋
店に行くとガラス張りの路面側の席に由美さんが座っていて、落ち着かない様子で僕を待っていた。
カプチーノをそれぞれ頼んで、久しぶり……と会話を交わす。由美さんとこうして二人で会うのは六年ぶりだった。
墓参りの礼を言われ、それから、
「娘が会社でお世話になってるみたいで……」
と神妙な顔つきで切り出された。
僕の予測は外れていないみたいだ。
「……ああ、こちらこそお世話になっているよ。ほんとう奇遇だね」
「プライマリーの秘書課に配属されたことまでは知っていたのよ。だけど、まさか新人の円香があなたについているなんて思いもしなくて」
「心配をかけてすまなかった」
「ううん。こちらこそ……円香が迷惑をかけているんじゃないかと思って、気が気じゃなかったのよ」
「僕を呼び出したのは、その為か」
「ごめんなさい。忙しいところ……」
由美さんは遠回しに、彼女とのことを聞きたがっている。何からどんな風に伝えようか。もう、彼女には伝えてしまったのだから、由美さんにも本当のことを言ってしまおう。
「由美さん、この際だから伝えておくよ」
ティーカップをソーサーに戻して、由美さんが僕を見る。
「僕は、あなたのことが好きだった」
「……透くん」
由美さんの顔色が変わる。申し訳なさそうに瞳の色が沈んでいく。