ひとまわり、それ以上の恋

 リビングにそっと顔を出し、アイボリーと濃い目のブラウンで整えられたお洒落な部屋にほうっと感心をしている場合じゃない。

 起こしに行くということは……。
 今になって私は、その意味を深く考えて、緊張が漲った。

 落ち着いて、円香。

 彼は、お父さんと同じ年代! お母さんとも同じ! 副社長は上司! そうだ、お兄ちゃんを起こしに行く感覚だと思えばいい。

 スーハーしながら、呪文を唱えて、いざ出陣――。

 ただでさえドキドキして止まらないのに。
 寝室の中央には、おそらくキングサイズの、大きなベッド。それから、シーツに包まる市ヶ谷さんの姿を見つけたとき。

 私の心臓はさらにドクンと大きく弾けた。

 ちょっと待って。もしかして……上半身、裸……!?
 枕に回された逞しい二の腕、引き締まった背中、それ以上はもう……目の毒だ。

 ダメ、くらくらする。

 市ヶ谷さんは低血圧なのも年のせいかな、なんて……笑ってごまかしていたけど。

 そんな人が、こんなにセクシーなカラダしてる訳がない――。





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