ひとまわり、それ以上の恋
「だ、大丈夫です。歩けます」
バッグを右肩に掛け直して、どうにか平静を装う。
「これは?」
市ヶ谷さんが一枚の名刺を地面から拾い上げた。
「あ、それは……」
慌てて手を伸ばすと、市ヶ谷さんにはっきりと見られたみたいで。意味深な視線を感じた。
「営業の……沢木か。ふぅん、いいんじゃない」
「あ、勘違いしないでください。ただ送ってくれただけで。沢木さんはそんなんじゃ、それに私みたいな子、相手にしません」
後ろめたいことなんて何もないのに。なんで言い訳みたいなことしてるんだろう。沢木さんのことだって今日初めて知ったんだし。
でもムキになって訂正したところで、市ヶ谷さんにとって私のことは秘書以外の何でもないもんね……。