ひとまわり、それ以上の恋
「酔いざめにハーブティはどう?」

 玄関のドアを開いて、市ヶ谷さんは私を招き入れる。さっきのことなんて何事もなかったかのようだ。

「じゃあ私がお淹れします」

「そうしてくれるとありがたい。そのうちに君に見てもらいたいものを用意するから」

 私はさっそくキッチンに立ち、ドライハーブの瓶を眺めてブレンドを考える。市ヶ谷さんなら知ってるかな……この方法。

「冷蔵庫の中のレモン、いただいてもいいですか?」

「あぁ、いいけど。紅茶に変更するつもり?」

「ヒミツです」

 マローブルーというハーブをポットに入れて、ティーカップ二つ並べる。

 名前の通りに青色のマローブルーは時間が経過すると次に菫色になり、このレモンを一滴落とすと――淡い桜色に変わる。

 リトマス紙の実験のようだけど。中学生の時に父から初めて教えてもらったときは感動したんだった。

「サプライズティー。どうぞ」

 私がカップを置いて、レモンを差し出すと、市ヶ谷さんはなるほど、と微笑んだ。
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