便利屋



はしゃぐ奈央は、ほんと子供みたいで見ててなんだか心が軽くなる。



あの、奈央を連れ出した日のことを夢にみたせいか…ふと、ぼさぼさの男から託された写真のことを思い出した。



たしか…紛失しないようにって、大切なものを隠すように…タンスのなかに入れたんだっけ。


一応クライアントからの、依頼だからな。



立ち上がり、タンスへと向かう。


奈央もまた立ち上がり、キッキンのほうへと向かった。



『…上から2段目…だったよな。』


タンスの上から2段目の引き出しを、そっと引き開ける。


うしろでは、奈央が冷蔵庫を開ける音がした。



俺の手のなかにたどり着いた写真を見て、心臓が止まりそうになった。



「ねえ、やっぱりシュークリーム食べよー?」


奈央の声が、はるか遠くのほうで聞こえるような錯覚に陥る。


シュークリームの箱を再び手に持って来た奈央は、またふいに俺の顔を覗きこんで微笑んだ。



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