便利屋
優しく笑う華おばあちゃんに、心がふわふわした気持ちになる。
『奈央はクライアントだったのに俺…奈央が好きになっちゃったんです。』
わかってた。
わかってたはずだった。
奈央の笑顔は、すべて偽装の彼氏に向けられたもので…俺じゃない。
「じゃあ…ヒロくん依頼放棄しちゃったみたいだし、ひとりの男として…奈央ちゃんに会いなさい。」
『男として…?』
「仕事を差し引いて、奈央ちゃんとお話するのよ。」
『…でも、』
「大丈夫。ヒロくんはもう、私がいなきゃだめだった頃のヒロくんじゃない。」
華おばあちゃんが、少し悲しそうに笑った。
「ヒロくんはもう───…、ヒロトだもの。」