便利屋



優しく笑う華おばあちゃんに、心がふわふわした気持ちになる。


『奈央はクライアントだったのに俺…奈央が好きになっちゃったんです。』



わかってた。
わかってたはずだった。

奈央の笑顔は、すべて偽装の彼氏に向けられたもので…俺じゃない。



「じゃあ…ヒロくん依頼放棄しちゃったみたいだし、ひとりの男として…奈央ちゃんに会いなさい。」


『男として…?』


「仕事を差し引いて、奈央ちゃんとお話するのよ。」


『…でも、』


「大丈夫。ヒロくんはもう、私がいなきゃだめだった頃のヒロくんじゃない。」


華おばあちゃんが、少し悲しそうに笑った。


「ヒロくんはもう───…、ヒロトだもの。」



< 80 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop