先生とシンデレラ

次の日、社会科準備室で一人で静かに資料を探していると。

コンコン
とドアをノックする音がした。

鍵は一つしかなくてその鍵は俺が持っているし、中からは鍵が掛かっている。

一人でやりたいし、ほかっておこう。

そう思ってまた資料を探し出す。

コンコン

…

コンコンコン

“いるのはわかってますよ”
とでも言う様に。

…誰だ。

このお昼休みにここを訪ねてくる先生なんていない。

ていうか、そもそも今ここを使ってる先生なんてほぼいない。

今は、ネットで全てを探せるから昔の紙の資料なんて使わないらしい。

…昔の紙、だからこそ歴史を感じれるのに。

ここは、俺の自室状態だった。

じゃあ。

“先生”

「…」

静かに手に持っていた資料を棚に戻して扉に向かう。

少し期待をしてしまう自分に呆れる。

突き放した、くせに。

カチャ…

ゆっくりと鍵を回して、ドアを開けると。

「…！」

急いでもう一度閉めようとしたドアと壁の間に手を置かれる。

「…っ」

ピタッとドアを閉めようとした手の動きを止める。

…生徒の手を挟むわけにはいかない。

「…ひどい。先生、今、閉めようとしましたね？」

「…」

「それに、ずっと居留守使ってた。」

ゆっくりと可愛い顔で微笑むその子は。

「なのに、急に開けてくれましたね。」

会いたくなかった生徒。

「もしかして」

ほら。

「…羅々ちゃんだって期待しました？」

核心をついてくる。

「思ってないよ。」

花森はニヤニヤしながら
「へぇ？」
と言った。

「何か用」

「…そんな迷惑そうな顔しないで下さいよ」

そこは、否定しない。

「そんな大切な用事がないなら閉めるけど。」

またドアを触ると。

「分かりました、分かりました。でも先生、この事聞いたら平然としていられなくなると思うな。」
花森が楽しそうに笑う。

この子は。

何で。

「何」

花森が、ニヤリと笑った。