先生とシンデレラ
これまでにないくらい長く感じる社会科準備室から教室までの道のり。

この学校に赴任してから、今までにないくらいのスピードで廊下を突き抜ける。

「…っ」

教室まであと一歩の角を曲がると。

「…はっ…はっ…」

弾む息を抑える事も出来ずに、キュッと足を止める。

目の前には。

優希と笑顔で笑っている、羅々。

「…っは…はっ」

最悪だ。

年甲斐もなく全力疾走だなんて。

少し汗ばんでるし。

こんなの。

「…くそ」

二人は、俺に気付かずに仲良く話している。

何なんだ。

「…やっぱり、好きなんじゃないですか。」

後ろから花森の声がする。

「あんな全速力で走るなんて…「花森」

ゆっくりと後ろを振り返る。

今までにないくらいの低い声を出すと、花森がびくんっとした。

ゆっくりと、近づきながら。

「良い加減にしないと、先生も手に負えないな。」

「…」

「今度羅々の事でからかったら、」

その横を通り過ぎながら。

「…許さないからね。」
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