先生とシンデレラ
三浦君と二人で話し合って社交ダンスの曲は、“くるみ割り人形”に決めた。

その事をトオルさんに話すと、早速振り付けを次の日に決めて来てくれた。

三浦君はやっぱり運動部なだけあって、トオルさんが言った事をすぐに出来てすごかった。

問題は、私。



「…ちょっと、もー!何やってんのよー!」

転んでしまった私に、三浦君が大丈夫か?、と言いながら手を出してくれる。

その手を取りながら、ゆっくりと立ち上がる。

「もう一週間もこの曲やってんのよ?!いつまで覚えて来ないつもりよ!」

トオルさんの厳しい言葉に三浦君が、
「…!おい、そんな言い方「…良いの。本当の事だもん。」

私が、先生の目を気にしてしまうから。

他の事を考えてるから。

家ではちゃんと出来るのに。

トオルさんに向き直って頭を下げる。
「すみません、もう一度お願いします。」

「…長谷川」

まだ何か言いたそうな三浦君に、手を差し出す。

「ごめんね。もう一回、付き合ってくれる?」

「…それは、いいけど…」

三浦君はおずおずと私の手を握った。

「ありがとう。」

トオルさんがもう一度頭から曲を流し始める。

先生の方は、見れない。



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