先生とシンデレラ
フェンスに背中を預けて座りながら。

「…くそ」

そう呟くと。

そばで砂利の擦れる音がした。

下げていた顔を上げると。

「…何で、お前なんだよ。」

「…たまたまだよ。」

飄々とそう言いながら。

本当は。

心配して来たくせに。

そういう所も、むかつく。

「…何で、来たんだよ。」

もう一度そう聞くと。

「だから、たまたまだよ。」

そう言いながら、加藤はブラックコーヒーの缶を差し出した。

「…買いすぎたから、あげる。」

買いすぎるわけ、ないだろ。

俺の目が、腫れるから。

わざわざ。

缶を黙って受け取る。

「…じゃあね。」

そう言って出て行こうとする加藤に。

「…長谷川の事、ちゃんとするんだろうな!」

そう叫ぶと。

加藤は振り返って。

自信気に笑う。

「…言われなくても。」

誰もいなくなった屋上で貰ったばかりの缶コーヒーを開ける。

「…」

一口、口に含むと。

あいつに貰ったコーヒーの味は。

「…苦」








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