先生とシンデレラ
「…っあ…と、一分…!頑張って、羅々!」

次の授業が行われる場所、理科室はこの角を曲がってちょっと行けば、すぐにつく。

だが、あれから一旦教室に戻りそこから一番遠い校舎、しかも階段を上り下りする作業を全部全速力でこなしてきた私達の足は限界を迎えていた。

そして授業が始まるまであと10秒…っ

キーンコーン…

チャイムが私たちの走る音と重なり合って静かな廊下に鳴り響き始める。

すると足の遅い私をひっぱている華ちゃんが私の方を一回も見ずに言った。

「なぁんで、よりによって…っ次が永井の授業なのよ…っ!あ…っの先生すーぐ呼び出しするから、目立つ行動したくないのに…っ」

…“目立つ行動したくない”?

華ちゃん…

どの口が言ってるの…

私はそう思ったが、今は口を出さないでおこう…、とひたすらに走った。

「遅れて、永井に怒られたら…っ加藤先生絶対…っ絞めてやる…っ」

カーンコー…

鳴り終わろうとしていたチャイムと共に華ちゃんが勢いよく理科室の前の扉を開けた。

「セ―――フッ」

そんな声と共に。

だけどそんなのはただの掛け声みたいなもので…

永井先生は突然入ってきた私達を睨みつけて、
「ぜっんぜん“セ―――フ”じゃないっ!特に日比谷、遅れて来たくせして目立つな!」

ビシィっと華ちゃんを指さしてそう言った。
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