先生とシンデレラ
中々言い出さない先生に痺れを切らしたのか、華ちゃんが
「先生、早くして下さいよ。」
と言った。

それを聞いた先生はさっきよりも数倍怖い顔をして
「…うるさいな。分かってるよ。
今慎重に選んでるんだから、黙って待っててよ。」

…そ、そんな慎重に選ばなくても。





そこで一つの嫌な考えが浮かんで。

…でも、もしかしたらあれなの?

段々と顔が俯いていく。

私がダンスで三浦君の脚引っ張りすぎたから、今回も脚を引っ張っても怒らない男の子を…





ありうる…

しかも、その可能性を否定できない…

え?

だから悩んでるの?

バッと顔を上げると。

なぜか私を見ていた華ちゃんと目が合って。

私がわけが分からずにそのまま数秒見つめ合っていると。

華ちゃんはニヤッと笑ってから、私に向かって右手で親指を立てた。

「…へ」

意味不明な行動に思わず間抜けな声が出る。

次に華ちゃんが先生に向かって言った言葉は予想だにしない物で。

「…そんなに悩むなら先生が王子やったら良いと思います!」

華ちゃんの声に。

先生も。

私も。

って言うかクラス全員が。

眉をひそめて、思考が停止した。

そんなクラスの沈黙を破ったのは、やっぱり先生で。

「…は」

先生の辛うじて絞り出しただろう声が、クラス内に響いた。


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