先生とシンデレラ
「…ちょっと、羅々」

目の前の、この状況に頭がついていかない。

「羅々…」

息が

「ねぇ。ちょっと、」

声が

「…聞いてんの。」

私の、耳のすぐそばに。

「…羅々!」

先生が顔を私の顔の目の前に持って来て。

「…っえ」

思わず声を出すと。

先生は相変わらず顔を近づけたまま。

「セリフ。早く。」

「…っえ、えっと、」

混乱する頭を必死で回転させて。

王子様がシンデレラをガラスの靴を使って見つけた所だから…

「“何で、私を見つけてくれたの?”」

「…さぁ、たまたまじゃないの。」

その言葉に思わず目を見開いて黙り込むと。

演劇部で監督役をしている女の子が
「カット、カット、カァート!先生、何言ってるんですか!そこはそんなセリフじゃ、「…だってさ。」

先生は私に近づけていた顔を遠ざけて、その子の方を向きながら、
「…“貴女が輝いて見えたからですよ”なんて、そんな分けないでしょ。たまたまだよ、絶対に。」

「…かーっ、先生何も分かってないですね、そういう事言われたら、女子は信じてしまう物なんです!それがたとえ、不可能でも!あり得ない事でも!」

先生はわかんないな、とでも言う様に私の方を振り向いて
「…そうなの」
と聞いた。

私は首を捻りながら、さぁ、と言う。

その言葉に監督役の子は怒った様に
「…長谷川さん!あなたももうちょっと感動を込めて!ここはシンデレラが王子様との再会を、泣いて喜ぶ様な場面なのよ!」

その言葉に、私は苦笑いで
「…ごめんなさい」
と謝るしかなかった。

< 260 / 449 >

この作品をシェア

pagetop