先生とシンデレラ
配役が決まって早くも3日。

たくさんのクラスメイトが、ミスコン・ミスプリWグランプリを狙って力を合わせてる。

大道具や小道具、衣装なんかも皆で分担して着々と準備が進んでる。

だけど。



「…長谷川さん!」

監督役の子は、斜めに座っている私と、私にやや覆いかぶさる形で身を乗り出している先生に向かって声をあげた。

…もう何度目だろう。

「…ご、ごめんなさい…っ」

異様に近すぎる先生の胸板を精一杯の力で押しながら、監督役の子の顔、伊藤さんの顔を見てそう言う。

でも、こうなるのは。

伊藤さんは、休憩しましょ、と言った。

私がため息を1つ吐くと。

「羅々、緊張してんの」

「…」

そう呟いた先生の顔を怪訝そうに私が見ると。

「…羅々が机の上に置いた台本ちらって見たけど、大分ボロボロだったね。…読み込んだ証拠だよ。先生のだってそんなボロボロになって無いのに。」



「羅々の記憶力からしてそんなに読み込んであれば全て覚えてるはずだよ。…ほぼ完璧にね。」

不思議そうな顔で、私の顔を覗き込んでくる。

…だから。

「まぁ、感情を込めれるかは別だけど。それでも、こんなにセリフ飛ぶのは何でなの。」

「…っだから、近いんです…!」

「…」

先生はそれでも顔を遠ざけない。

それどころか益々顔を近づかせる。

先生の。

顔が。

目が。

口元が。

今日だけじゃない。

昨日だって、その前だって。

それで私がセリフ飛ぶと笑うんだからタチが悪い。

「…何言ってんの、羅々はシンデレラで先生は王子様なんだからそんなの当たり前「…も、やだ…っ!」

耐えきれなくなって、私は先生の方を、ドンッ、と押した。

「…っ」

先生は私の行動を予想していなかった様で少しフラついて、後ろに手を着く。

私はあまりの近さに緊張して少し涙がたまった目で、
「…先生、生徒の嫌がる事し続けるなんてセクハラです…っ!」

先生は少し目を見開いて、でもそれから笑ってから言う。

「…そうだね。生徒の嫌がる事をし続けるのはセクハラ、だね。でも…」

私に、目線を合わせて。

「羅々は、本気で嫌がってないでしょ。」

〜…っ

赤いだろう頬と
緊張からなった涙目と
図星と

いろいろと気づかれたく無くて、私は勢い良く立ち上がって
「…先生なんて、大っ嫌い…っ」

その言葉を残して、私は教室を出て行った。

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