先生とシンデレラ
ドアの外から教室の中を見ると、先生は黙ってキーボードを打っていた。

…怒られるかな。

そう思いながらも、私が無言でガラッとドアを開けると、先生はゆっくりとパソコンから顔をあげて。

驚いた様に目を見開いた。

「…な、んで」

絞り出すのがやっと、みたいな声。

その声に気づかないふりをしながら、私は先生の目の前まで歩いて手に持っていた袋に手をいれた。

「…羅々。危ないから帰れって言ったよね。…もう八時半だよ。」

「…すぐ、帰りますから。」

そう言いながら、大通りにあったコンビニで買ってきたばかりの缶コーヒーと眠気防止のガムとおにぎりと五個のチロルチョコレートをばらばらと出す。

「何、これ…」

先生の呆気に取られた様な声。

「差し入れ、です…」

その言葉に先生は私をゆっくりと見る。

「…羅「私、先生が疲れてるの分かってたんです…っ!」

「…え」

「先生の顔が、すごい疲れてるの分かってて…それが、劇やってるからなのも分かってたのに…」

「…」

思わず、俯く。

先生は何も言わずに私を見てて。

「なのに…」

「…うん」

「それを言ったら、先生が“じゃあ、やめようかな”って言う気がして…」

「…」

「それが…っ、嫌だから、だから…」

「…」

「だから、これだけは受け取って下さい…」

私が顔を上げれずにそう言うと、先生は
「…馬鹿だね」
と言った。




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