先生とシンデレラ
ガチャ

運転席のドアが開いて控えめにそちらを見ると、先生は手に持っていたいかにもサラリーマンって感じの鞄を私の方に突き出した。

「…」

「鞄、後頭部座席においといてくれる。」

その言葉に私はやっと先生に鞄を突き出された意味が分かって。

「わかりました。」

そう返事をして鞄を受け取った。

すると先生はさっさと運転席に乗り込み私が差し出したキーを受け取り、差し込んでエンジンをかける。

「さて。」

「…」

「どこに行きたい。」

いやいや。

「…何で、私を、今日…」

「…この間の差し入れのお礼だよ。」

「…え」

「今日は早く終わったしね。どこにでも連れてって上げる。ただし、ココの生徒がいそうな所は却下するからね。」

「…どこにでもって、急に言われても、「今から一分ね。早く決めて。じゃあ始め。」

その言葉に、わけが分からないけどとりあえず何処かに連れてってくれるらしい事と、その場所を今すぐ決めなければならない事が分かって。

…行きたい、所。





特に、無い。

っていうかむしろ、先生が望む場所が分からない。

私が行きたい場所があったとしても、そこが先生といける場所かどうかなんて分からないし。

どうすれば…



そんな事を考えていると。

「…はい、一分。どこ?」

「っちょ、早くないですか…」

「は。羅々、時計にケチつける気?なかなかやるね。」

「…いや、そう意味じゃ「で、どこ?」

…私の話なんて聞いていやしない。

そんな事はいつもの事なので、置いとくとして。

それよりも。

私が行きたい、場所。

さっき考えた、一番の回答を返す。

「…私、先生の行きたい所に行きたいです。」
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